記念誌に特別寄稿

今年ノーベル医学生理学賞を受賞した「大村智さん」は、理事長と同じ、山梨・韮崎高校の出身でした。同窓会では受賞を記念して記念誌を発行することになり、
その時何と理事長に特別寄稿の依頼が来ました。
出来上がった記念誌が送られてきましたので紹介します。    (スタッフ)

 「DVの負の連鎖を断ち切るには」 第15回卒業生  
NPO法人 女性・人権支援センター ステップ  理事長・栗原加代美

韮高を卒業して51年になる。
高校で過ごした懐かしい恩師や友の顔を思い浮かべながら原稿を書いている。
私は今、DV加害者更生プログラムを横浜の地で始めて5年になる。
夫婦間におけるDV被害者は3人に1人、命の危険にある人は9人に1人、結婚前のデートDVは5人に1人と内閣府は発表している。
DV加害者やストーカーに依る殺人事件が相次ぐ中で、更生プログラムの働きは意義深い。
加害者が変われないと言われる中で、ここに集う加害者の8割は、暴力行為から解放され、相手を尊重できるようになる。

この働きを始めた原因は、10年間のDV被害者を守るシェルター運営にある。
妻がシェルターに逃げてきても、夫が変わらない限り妻は一生安心して暮らせない
夫に変わって貰うことが、根本的解決になるのだと気付かされた。
相談に見えるDV被害者の妻たちの半数以上が抑うつ状態にある。
自傷行為を繰り返し、自殺を考える人も多い。
愛を誓い合い、子供までもうけた夫から叩かれ、無視され、「おまえは能なしだ、誰に食わせてもらっている、妻失格だ、母親失格だ、死ね」と怒鳴られ、自分も夫も信じられなくなる。
自分が悪いから夫がなぐるのだと自分を責める。
夫におびえ、自分の意見が言えなくなり、離婚を決断して逃げる妻も多い。
これが夫からDVを振るわれた妻たちの実態である。

このような妻たちが夫に変わってほしい、自分にできることはあるのかと悲痛な叫びと共に加害者プログラムに相談に訪れる。妻は夫がプログラムに参加する事を願い、そして夫が変わることを忍耐してひたすら待つ。
その中のあるものはDVを受けたストレスを子供に虐待という形でぶっつける。
虐待された子供は学校で友人にいじめという形であたる。
それでは大元のDVを振るう夫たちはどこからDVを学んでくるのだろうか。

DVの本質は暴力行為そのものでなく「日常化した力と支配の主従関係」にある。
妻が「奴隷化」することである。
さらに相手が言うことをきかなければ叩いていいという「暴力容認意識」。
これらの歪んだ価値観は社会のそこかしこにある。
父親と母親、親と子供、上司と部下、教師と生徒、部活の先輩と後輩など。
そう考えるとDV加害者も社会からの被害者であるかもしれない。
しかし、加害行為は複数の選択肢から選んだ彼らの責任である。
この連鎖を断ち切るには、DVのやめかたを学ぶ必要が有る。

ステップの加害者プログラムで連鎖を立ちきりたいと中学三年生の男子生徒が訪れ、プログラムに通ったケースを紹介したい。
父親が母親にDVをふるい、母親が彼を虐待し、彼が妹に虐待をしていた。更に学校でもいじめのリーダーとなっていた。
父親がプログラムに参加してDVが改善して家族に笑顔が戻り、彼もどうしたら虐待やいじめをやめられるのかと通い始め4ヶ月ほどで虐待やいじめから解放された。
連鎖を立ちきりたいと気づき、行動に移した彼に拍手を送りたい。
このケースに見られるようにDVの連鎖を断ち切るためには、DVだと気づいた夫たちが支配することを止めて「互いを尊重する関係」の素晴らしさを、身を持って子供たちに伝えることがDV根絶の大きな力になると信じている。

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by npo-step | 2015-12-12 10:30 |  これまでの活動